Matthews' Issue

アメカジオンラインショップのマニアックブログ。アメリカンカジュアルは面白い!

日本製の明日

      2016/02/26

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先日紹介したmade in U.S.A.のバッグをじっくり見ているうちに頭に浮かんだことをつらつらと。

ある展示会でメーカーさんと話をしている中で、生産中止になる品番がいくつもあると伝えられました。

海外の一流ブランドからも引く手数多のジャパンデニムとか、日本の工場の高い縫製クオリティーなどアパレル界の住人のひとりとして誇らしい評価もある一方、いま日本の地方工場は廃業・倒産するところ続出です。

セルビッジ生地大手の山文が高齢化を理由に廃業、シャトル織機120台は海外に


工場が稼働しなくなるには、受注の減少、経営者の高齢化&後継者不足、「話が違うじゃねーか」という外国人実習生の集団ボイコットなど原因はいくつかありますが、さらに縫製工場が減少したことで、既存の工場へ注文が集中してしまい、少ロットかつ縫い方の指定の多いいわゆる「知る人ぞ知る拘りのブランド」の注文は断わられたり後回しにされています(洋服にはシーズンがありますから、アウターが年明けになるなんて言われたらキャンセルせざるを得ません)。なかには工場の規模に合わせた少ロット生産を進んで受けている工場もありますが、大勢としてはそんな状況です。

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例えば古めかしいスタイルでワークシャツをデザインすると肩幅は狭くなります。ということは背中の面積が狭くなりますから、それでも着心地や動きやすさをキープできるように、脇下を若干広くサイジングしてゆとりを持たせたいのです。となれば自ずと袖付けのカーブはきつくなりますよね。でもこの程度の変更だけでも嫌がる工場があるんです。ブランド側からすると、せっかく作るのだから長く愛用してもらえる着心地とスタイルの両立を目指しているだけなのに、「ここのステッチいる? 手間なんだけど」と言われてしまう。

安いと言えば

工場にも言い分があるでしょうし、一人前としてカウントできない外国人や実習生にも(しかし彼ら抜きに工場を運営していくのが不可能な状況下で)ある水準の賃金を払うと結果的に販売価格が上がってしまい、それが市場や消費者に受け入れられづらい実情もあると思います。

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ほとんど購入したことがないので実感としては分かりませんが、ユニクロの商品の質が悪くなったと耳にするようになったのはここ5年くらいでしょうか。 質が悪い、原材料に何を使っているか分からないなどバッドイメージの強いメイドインチャイナですが、それでもアパレルに関しては、長年にわたって日本メーカーや商社のマネージメントの元、

新興国の中でのその技術力はトップクラスです。

それがさらに安価な労働力を求めて、ベトナムやバングラデシュに移ったわけですから、クオリティーが落ちるのは必然といえば必然。ユニクロがバングラデシュでの生産用に合弁会社を設立したのが2009年。時期的にはリンクしますね。

uniqlo / chinnian

社会現象にもなったフリースジャケットの爆発的なヒットの余勢を駆って、ファーストリテイリングは2002年に東証一部指定になります。上場企業は利益を上げて株主に還元することが大命題ですからね。最近は価格上昇も相まって散々な言われようですが、

高くなったとしてもあの程度の価格帯の衣料品に質が落ちたなんて文句言っちゃダメです。

新芽、あるいは中生代末期の小動物

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自分たちの手の届く範囲を少量生産で割高であっても顔の見える売り買いをしていくといった心意気は、New YorkやPortlandなど感度の高いエリアから徐々に広がってきています。ですが30~20年前から多くのアメリカンブランドが中国を始め工賃の安い新興国に生産を移行し、国内のアパレル製造業は疲弊したまま。いまの彼らは

焼け野原に芽吹いた新芽や巨大恐竜の足元で暮らす小動物のようなものです。
(考えてみると、ずっとアメリカ製を貫いているのは、AldenやRed Wing、Russell MoccasinやVansonなどの皮革品製造が多いですね。素材の国内調達がしやすいことと、アパレルに比べて扱う素材の種類が少なく済むことが理由でしょうか。)

...Been to Drumheller and Back! / laszlo-photo

アメリカの後追い大好きニッポンも、似た状況になってきています。

実は作り手たちはその大波に必死に抗っています(みんなそんな儲かってないし)。

 

でもブランドやショップの人たちは一般のお客さんに暗い話はしないので、あまりピンと来ないかもしれません。ネガティブなイメージを持たれたくないし、せっかく足を運んでくれたお客さんに楽しく買い物をしてほしいからです。でも好きなブランドやお店がずっと続いていくために知っておいてもいいと思うんです。 応援の意味も込めてそのブランドの商品を購入すること、売り手としては良さを伝えてひとりでも多くのファンを作ることが、

made in Japanの灯をともし続けるための一助になります。

そりゃ欲しいものはいくつもあるけれど、かといって何でもかんでも買えるわけもない、ですよね。

いまのアパレル不況下、展示会ではどうしても数字(金額)にシビアにならざるを得ません。「昨季はいくら売れていくら残したから今回はこの位」みたいな。でも洋服屋も自分のところで売っている服すべてを着ているわけではありません。自分の着ていないそのシャツやパンツを買って着ているアナタを見て、

(この色合わせアリだな……)
(ああいうコーディネートも面白いな……)
(着倒したらこんな風合いになるのか……)

と気づかされることも多々あるのです。

「着心地めちゃめちゃよかったですよ。さすが日本製ですね」
「あれ選ぶ色ちょっと間違えたかなーって感じッス」

好きなブランドでもワンシーズンにシャツ3枚も4枚も買えないけど、買った1枚に言葉でプラスアルファしていく。そういう感想や感覚の蓄積が、次はブランド側に「あれ店で評判よかったよー」「こんな合わせ方してるお客さん居てさー」と意見として伝わって、作り手はよりイイもの、カッコいい服を作ろうと頑張れます。喜んでもらえたら単純に嬉しいですもん。

ユーザーは商品対価と一緒に消費者ならではの意思と感性をお店に伝え、
お店はオーダーと同時に集約したエンドユーザーの感性をメーカーに伝え、
メーカーは発注とともに市場のニーズを工場に伝える。

工場は無理難題をクリアした誇りとともにメーカーに納品し、
メーカーは製品にしてくれた工場への感謝とともにお店に送り、
お店は新しい驚きや着る喜びと一緒にユーザーに販売していく。

アメリカの意識高い系の人たちは、着るものや食べるものに対し、”誰にお金が届くのかを考えて買う”、”同じ買い物ならば、長持ちして顔の見える生産者のものを買う”と言います。さすが意識高い系。カネとモノのやり取りしかないんだったら、非生活必需品のファッションは必要なくなってしまいます。それ以外の何かを乗っけて受け渡していくからこそ、上澄み部分としての文化になっていくんだと信じています。

明日も日本製のブランドがものづくりを続けていけるかは、実はわたしやあなた次第なんです。

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