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グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

      2013/12/08

箔押しのpsychedelic lettering。シビれますね、この表紙デザイン

箔押しのpsychedelic lettering。シビれますね、この表紙デザイン

ようやく出ましたこの本。『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』 です。1年ほど前に出た洋書 (『Marketing Lessons From The Grateful Dead』) の存在は知っていたのですが、

読めないとつまらないしなぁ…
ビジュアルだけでもいいから買おうかなぁ……

と考えていたところに日本語訳出版の話を聞きつけました。

大丈夫か町の本屋

お馴染みほぼ日刊イトイ新聞で紹介されており、ボストンの風景やオールドブリックの古い建物の雰囲気にノックアウトされて (もちろんインタビュー内容にも)、その出版を待ちかねていたところでした。Amazon で予約購入という方法もあったのですが、本屋好きとしては今回は近くの有◯堂に貢献することにしました。実はこの本、9月に発売予定でした。しかし実際に発売されたのは12月に入ったつい先日のこと。とある理由で延び延びになっていました。

7月下旬の事でした。上のYoutube にも出ていらっしゃる訳者の渡辺さんとツイッター上で何度かやり取りもさせていただいて、期待を込めて本屋に足を運び予約してきました。もちろんAmazon でもカバーデザインの表示もないままにバリバリ “予約受付中” でしたし。でも、

えっ? ひと月以上先の本をご予約ですか? もちろんできますけど…」

う~~ん、この感覚差。あまり呑気にしてると蔦が侵食してきて森に飲み込まれますぜ。

 

そうこうしているうちに8月も末。しかし製作陣のツイッターを覗いても何だかそれらしきツイートや画像が見当たりません。どうやら装丁作業が大幅に遅れていたようです。

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Grateful Dead とは何ぞや

さて、当ブログ上でもちょこちょこ名前を挙げているGrateful Dead。1960年代から活動していた、アメリカでカルト的な人気を誇っていたロックバンドです。

バンド活動のほとんどをライブとそれに関わるものに注ぎ込み、ファン向けの会報誌発行、業者を通さない独自のライブチケット発売システム、アンプやスピーカーをステージ上に積み上げた独自の音響設備 “The Wall of Sound” 構築、果てはツアーに付いて回るフリークの為の旅行会社設立など、アルバム製作などそっちのけの内容です。いま、ミュージシャンがファンクラブ向けにやっているサービスのほとんどがこのバンド発祥といってもいい位です(興味のある人はこちらもどうぞ)。

年間250本もライブをこなし、ライブ演奏するための楽曲制作であり、Jamと呼ばれる演奏スタイルはステージ上で1曲10分越えになるのも普通。スタジオアルバムはそれらをレコードサイズに縮めたダイジェスト版。スタジオアルバムを作ってリリースして、そのプロモーションの一環でライブやツアーを行ういわゆる普通のバンドサイクルとは逆回転です。しかしそれで圧倒的な数のフリークをいまだに生み出し続けているモンスターバンドなのです。

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有名なのはライブでの録音をフリーにしていたことです。私も昔エントランスで没収された記憶がありますが、コンサートの類で観客が勝手に録音するのはダメですよと教えられてきた世代です(おそらく今でもほとんどがそうですよね?)。しかしグレイトフルデッドの場合はそれを許可したばかりか、客席のなかで音響の良いエリアをtaper(いい音質で録ることが第一義のマニア) 用に割り当てさえしていました。ちなみにそんなマニアの間で音質が良いと評判だったのは本邦Maxell のカセットテープだったとか。やるぜ日本製。

すると今度はそのカセットテープをダビングするためのファン同士のコミュニティーが出来上がるのです(80年代以降生まれの方、ついて来てますか~?)。演奏の出来や展開もステージによって違いがあり、いい流れの選曲やめったに演奏されない曲がパッケージされた音源は特に人気だったようです(それでいて音質が良ければ言うことなしと)。

オーディエンスを制約することなく自分たちと同等に扱い、結果数多くのファンを作り愛されたグレイトフル・デッド。インターネットもない頃からソーシャル・コミュニケーション(のようなもの)を採用していた組織ということで、ビジネス面から光を当ててみたのがこの本です。

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当時働いていた店でよくかかっていたグレイトフル・デッド。音は何が良いのかさっぱり分からず、入りはご多分に漏れずTシャツなどグッズからでした(コアファンに最も嫌われるパターン(笑))。

グレイトフル・デッドのファンになるにはヒッピーみたいにならなきゃいけないと思っていたんですね。そんな勇気は全くないのでカッコのさわりだけを……。Birkenstock のサンダルを初めて知ったのも、デッドヘッズ (フリークの愛称) 御用達というところからでした。でも大本命のArizona を履かなかった僕はやはりニワカでして。

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そんなある日、目ウロコな出来事がありました。僕はタイダイデッドT、色落ちしたラングラーブーツカットジーンズに赤茶のワークブーツというコスチューム(認めます)で店に立っていました。髪は肩甲骨の下くらいまでありました。店に入って来た、どうやら旅行でアメリカから来られたらしい40代位のご婦人が、

「あらアナタいいTシャツ着てるじゃない。懐かしいわ~ 私もティーンの頃はよく聴いてたわ」

なんて言うじゃないですか。見た目にヒッピーのヒの字すら感じられない品の良さそうなおばちゃんなのに! あまりスタイルを気にしなくてもいいんだな~と思ったものです。アメリカではビル・クリントンやラリー・ペイジなど、見た目にはそう見えない人たちがデッドヘッズだったりしますからね。

しかし先にPHISH にハマってしまったので、グレイトフル・デッドの音楽を聴き込むのはその後かなり経ってからのこととなりましたが。

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ソーシャルメディアのリアルタイム感

さて本ですが、出版がかなり遅れたのはブックデザイナー祖父江慎さんによる装丁作業がかなり遅れていたからのようです。とてもカッコいいデザインで、遅れは十分にリカバリーしている出来栄えなので、こういう細かいところまで気を配られたことが分かるプロダクトは本来の目的以外にも所有している喜びがあるというものです(イメージに合うフォントをわざわざ買ってまでデザインしたんだそうです)。

4回ほど有◯堂から発売遅延のお知らせ電話を受けましたが、作業状況をツイートしている祖父江さんのツイッターアカウントを見ていれば、あ、これは発売はまだ先だな、この前連絡来た発売日また延びるなというのが本屋からの連絡が来る1週間以上前に分かってしまう訳です(印刷・製本作業だってそれなりに時間掛かりますもんね)。

これはもちろん本屋が至らない訳ではないのですが、圧倒的なタイム感の差といいますか、ソーシャルが生み出したリアルタイムのスゴさを発刊前から感じていたところでした。そして発売された本を読んでいて見つけた誤字を編集さんあてにツイートすると「増刷分で直します…」 と返事があるわけです(笑)。

いやいや、ソーシャル・コミュニケーション面白いですよ。

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若い頃は主に物販のマーケティング本をよく読みました。当たり外れも結構多くて、読んですぐ処分してしまうものが大半でしたが、この下の白い表紙のは10年前に買って今でもたまに読み返しています。10年後の今でも通用するタイムレスな内容で、自分にとってのバイブルというと大げさですがまぁそれに近い一冊です。

『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』 も同様に息の長い本になってくれそうです。このデザインですし、何と言っても40年以上も実践され続けている方法なんですからね。

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