ゆーすとなう
2014/06/05
昨日のお話なので 「なう」 ではないのですが、店内で作業をしながら宇多田ヒカルのUstream(ユーストリーム)のライブ配信を観ていました。
Ustream をご存知ない方のためにググってみますと、
『インターネットによる動画投稿・配信サービスの一つ。また、同サービスを運営する同名の企業。2007年3月にアメリカで設立された。俗に「Ust」「ユースト」などと略されることもある。利用者はパソコンや携帯電話などで動画を録画しながら同社サーバに送信し、同社サイトから視聴者にリアルタイムに配信(ストリーミング配信)することができる。テレビ中継のような動画のリアルタイム配信を個人レベルで行うことができるサービスである。サービスは無償で利用できるが、動画配信に際して広告が挿入される。』
とあります。簡単に言えばインターネット回線を使った生放送です。回線が別ですから別にテレビ局を介する必要もなく、品質についてうんぬん言わなければ機材もチープなもので大丈夫。
少し前の話ですが、店を始めるときに飲食店を営んでいる友人から店からのインフォメーションツールに使えるからとTwitter を勧められました。「あ゛? ツイッター?」 と初めはかなーり否定的でしたが結構プッシュしてくるので、「わーったわーった とりあえずやってみるよ (少しでもシャクに障ったらすぐ止めてやる)」 と半信半疑で始めてみましたが、結果その友人には感謝感謝感謝。Twitter が面白いというより、それによって知ることが出来たイベントがあまりにも面白いものでした。
10月末、坂本龍一が北米ツアーのいくつかをUstream 配信するというツイートを見かけたのが始まりでした。
「へー 生で聴けるんだ」
時差の関係で12時のオープン直前のスタートだったこともあり、インストだしBGM に丁度いいかなという軽い気持ちでアクセスしました。演奏はとても素晴らしいものでした。太平洋を挟んだ遠方からのライブをリアルタイムでなおかつ無料で観られている。これって結構すごいことなんじゃないか?
後から分かったことでしたが、その事の起こりがTwitter のたった2~3回のやり取りだけだったというのがとてもエキサイティングでした。
坂本龍一が知人の古川さんという人に、「観に来るならついでに」 とUst 配信を頼み、古川さんが 「こういう理由で渡米の準備をしています」 という内容をツイートしたところ、それを見た平野さんという人が 「面白そう。手伝いたい」 と。
古「じゃあ いらっしゃい」
平「え?いいんですか」
古「明日のデルタかユナイテッドに乗れば間に合うよ」
平「ひえー ままままマジですか」
ちなみに古川さんは元マイクロソフト日本法人の代表、平野さんはWeb 関係の会社経営者です。Twitter上でのたったこれだけのやりとりでツアー同行が決まってしまいました。
何だこのライブ感は。
社長が明日から急にアメリカに行きます。しかも仕事ではありません。世界のサカモトの音源生配信のメンバーがこんなイージーに決まっていいのか? Web 業界の巨人と寵児がビジネスではなく、ただ「面白そうだから」という理由でボランティア参加。
何だこの軽さは。
本来はシアトルとバンクーバーの2公演配信だけのつもりが現地スタッフにも気に入られ、日本からのリアクションもよかったこともあり、残りのサンフランシスコ、ロサンゼルス公演もやっちゃおう! と帰りのエアチケットを破るところまでUstream 配信していました。
鉄道での移動の様子を珍道中風に配信したり、リハーサル風景も配信、公演前後にバックステージの解説をしたり、安定している回線を確保するために機材を買いにいった状況をツイートしたり。
北米エリアは発信用回線がとても細く不安定なようで、「シアトル在住の方で安定回線確保のいい方法を実践している方がいたら教えて!」 とか 「この会場近くで高レベル配信用グッズを売っているお店知りませんか?」 とTwitter 上に投げかけるとしっかり返事が来るんですよ。
平「よし古川さん買いに行って!」
古「了解!」
というやり取りもTwitter 上で見られるわけです 。古川さんの方が20歳位上なはずですが、とても楽しんでやっている雰囲気が伝わってきます。どこの公演も現地入りしてからのトラブルがとても多かったようなので、もし古川さん独りしか参加していない状況だったとしたら配信自体が行えなかった可能性もあったと思います。
最初の2、3回のやり取りがなかったら、大勢の人が坂本龍一の音に触れる機会自体がなかったかも知れないわけですから、バタフライ効果とは言えないまでも、平野さんナイスつぶやき!と拍手したくなります。
本番ライブ以外のやり取りも面白くて、まるでこちらもツアーに同行しているかのようでした。視聴者も回を追うごとに増えていき、毎回ほぼ1万人もの人がライブをリアルタイムで観るという体験をしました。
今、坂本龍一は大貫妙子とジョイントツアーを日本でしていますが、そこでは今後のことを考えて坂本龍一本人が機材を揃え、本人がステージ上でセッティングして配信するという「ひとりUst 」というのを実験的にやっています。全公演フリーで配信しています。最初の数公演は私物のスマートフォンを使うというDIY ぶりです。
でも携帯だと動作熱のせいで配信が途中で切れてしまいます。公演後、坂本龍一がつぶやきます。
「何かいい方法はないかな」
「熱が上がらなければいいんですよね。冷えピタ貼ってみたらどうですか」
「冷えピタか。どうもありがとう」
で、次の公演で貼るんです(笑)。最先端のネットワーク上でのやり取りなのにこの手作り感は何なんでしょう? その悪戦苦闘ぶりを配信やTwitter で知ったメーカーさんが 「うちのカメラお貸ししますよ」 と参加してくるのです。すごいことをやっているのに人の集まり方が文化祭の出し物レベルなんですよね。
さて、昨日の宇多田ヒカルです。
基本的にUstream は固定させたひとつもしくは少ない複数のカメラで撮影される手作り感あふれるものが多いのですが、昨日のライブはカメラ数、アングル、スイッチングなど全てが既存のUst 配信のレベルを大きく越えるものでした。グレードが高すぎてDVD を観ているみたいでした。
「でも今やっているんだよなぁ。不思議だよなぁ。」と感心しきり時々トリハダの2時間強でした。PC 用とモバイル用の2回線が用意され、両方合わせた視聴者数は驚異の10万人超えでした。
(坂本龍一の1万人でも十分すごいことなんですよ)
面白かったのは家に帰った後に「ライブから帰ってきた後のほわんとした余韻」がしっかりあったことです。誰のどんなライブでも一緒で、終わった後というのは観たもの聴いたもの感じたことを断片的に思い出して「ほわん」としてしまうものです。それがああいう配信ライブでも感じられたことがとても面白かったです。
それはおそらく “アーカイブ(再配信) なし” というのが大きかったと思いますし、一時停止してトイレに行ったり、続きは明日観ようということが出来ないその場その時限りの体験だったからじゃないかなぁと思うのです。
それでも途中回線落ちで観られなかった時間が結構あったので、DVD が出たら買ってしまいそうな自分はいますけどね。 (^ ^;)ゞ
再び坂本龍一です。
今週末の東京公演はwowow(!)を巻き込んでの配信になるので、Ust 側は解説付きのサブチャンネル扱いのようです。それでもプロ (前述の平野さん) がサポートに入るのでレベルはググッと上がるはずです。
そして来年の1月9日は韓国でのソロライブを、「配信の威信を賭けて」の高品質配信に臨むようです。これは楽しみです!
洋服のことでもないのにまた長々と書きましたが、還暦近い人がこれだけ新しいものにチャレンジしているのに、利用すらしていない30代が否定的に捉えるのは何か違うんじゃないかと思ったのが、僕がTwitter やUstream にアプローチし始めたきっかけでした。
大きいコストがかかることでもない (利用するだけなら両方タダです) のであれば、ハードルは高くない訳ですし、要る要らないはとりあえずやってみてから考えよう、ということです。
販売促進用としては大して役立てられていませんけれど、それでも数人のお客様とのやり取りや遠方に住んでいる友人の日常が知れたりとちょっとした楽しみを受け取っています。そもそも140文字だけなのでそんなに大切なことを伝えようとは思いませんしね。
僕はブログもまだ始めたてなのにTwitter まで手を出してしまいました。時間の配分は結構大変ですけれど、うまいことやりくりしながらお店最優先で楽しんでいきたいと思っています。
ちょっとでも「へ~」っと思った方は試してみてください、Twitter 。面白くなければいつでも止められますし、お気軽に。